デービーバックファイトが原作漫画で描かれたのは、第32巻304話から第34巻318話にかけてのわずか15話分です。大冒険となった空島スカイピアからの帰還直後、読者が求めていたのは新世界への進展や三大勢力の動向といった壮大な世界情勢でした。そこに突如として挟み込まれたのが、奇妙なノロノロの実の能力者・フォクシー率いる海賊団との、仲間を奪い合う泥臭いゲームでした。
当時の読者コミュニティでは「ジャンプ掲載時の引き伸ばしではないか」「物語のメインストリームから外れた脱線回」といった辛口な評価も散見されました。しかし、作中で語られたルールと儀式には、極めて異質なリアリズムが宿っています。コインを海に投げ入れ、海の悪魔に誓いを立て、掟を破れば命すら海に捧げねばならないという設定は、それまでのルフィたちが繰り広げてきた爽快な冒険活劇とは一線を画す「冷酷な海賊の掟」そのものでした。
決定打となったのは、物語が大きく動いた元海軍本部元帥センゴクの述懐です。四皇カイドウやビッグ・マム、白ひげがかつて所属していた世界最凶の組織「ロックス海賊団」が、まさに海賊島ハチノスで一つの儲け話のために集結して生まれた事実が明かされた瞬間、読者の脳裏にロングリングロングランドの光景が鮮烈に蘇ることになりました。取るに足らないコミカルなゲームは、作中最大の暗黒史を解読するための「事前プロトコル」だったのです。