ファンの間で長年議論の的となってきた命題が、「シャア専用ザクは本当に通常のザクの3倍速かったのか」という疑問です。カタログスペック上の数値を検証すると、驚くべき軍事リアリズムが浮かび上がります。
公式設定集『ガンダムセンチュリー』や『マスターアーカイブ』等の技術資料によると、シャアが搭乗した「MS-06S(中隊長用高機動型)」のスラスター総推力は、一般兵が乗る量産型「MS-06F」と比較して約30%向上(1.3倍程度)に過ぎません。エンジンの出力自体が物理的に3倍になっていたわけではないのです。では、なぜ目撃者たちは一様に「3倍の速度」と証言したのでしょうか。
決定的なカラクリは、シャアの超人的な操縦技術にありました。シャアは宇宙空間に漂うデブリや連邦軍艦艇の装甲を足部マニピュレーターで直接蹴りつけ、慣性エネルギーを反作用として利用する「キック機動」を多用しました。さらに、通常パイロットが次弾装填や回避のために設ける「減速マージン」を一切取らず、トップスピードのまま敵艦の死角へと滑り込む一撃離脱戦法を徹底。
迎撃する連邦軍のブリッジからは、自艦に向かって一直線に迫り、瞬時に標的を粉砕して別の宙域へと消え去るその挙動が、ベクトル合成による相対速度として「一般機の3倍以上の速度」に知覚されたのです。物理法則の裏をかいた操縦技術と空間認識力こそが、「通常の3倍」という怪物の正体でした。