波野好江さんの飾らない人柄とおっ母さんぶりを世に知らしめたのが、フジテレビ系で35年以上にわたって継続放送されている『中村屋ファミリー密着ドキュメンタリー』シリーズです。カメラは栄光の舞台裏にある、血のにじむような稽古と家庭内の葛藤を克明に記録し続けてきました。
番組内での好江さんの振る舞いは、一般的な「お高くとまった梨園の奥様」というパブリックイメージを根底から覆すものです。幼少期の勘九郎さんや七之助さんが稽古に身が入らず弱音を吐いた際には、「舞台を舐めちゃいけないよ!」と誰よりも厳しく叱咤し、ひとたび舞台で大役を務め上げれば、楽屋裏で涙を流しながら抱きしめる情の深さを見せてきました。
特筆すべきは、直系の子どもたちだけでなく、部屋子や弟子たちに対する無償の愛情です。歌舞伎界の血筋ではない一般家庭出身の部屋子・中村鶴松(つるまつ)さんに対し、好江さんは実の母親と寸分違わぬ愛情を注ぎ続けました。食事の支度から学業のサポート、楽屋での礼儀作法に至るまで、息子たちと一切の差別なく厳しく育て上げ、現在では立派な歌舞伎役者として大舞台に立たせています。
SNSやファンの間でも「中村屋の特番を見るたび、好江さんの偉大さに涙が出る」「弟子や部屋子をここまで分け隔てなく愛せる人はいない」と絶賛の声が絶えません。この深い人間力と器の大きさこそが、勘三郎丈亡き後も誰一人として中村屋から弟子が離反せず、結束を保ち続けられた最大の原動力となっています。