多くの視聴者にとって忘れられない記憶となっているのが、2023年3月(テレビ放送は4月)に開催された和歌山公演での涙の卒業劇です。この公演で、ゆきちゃんは丸4年間務め上げた『ワンワンわんだーらんど』の舞台に別れを告げました。
ステージ上では、12年ぶりの和歌山公演であることに触れたワンワン(チョーさん)から「12年前と言えばゆきちゃんはいくつだった?」と問いかけられ、ゆきちゃんが「ゆきはね、今14歳だから2歳だね! おともだちと同じくらいかな?」と答え、ワンワンが「12年経つとこんなんなっちゃうんです」と笑わせる一幕がありました。客席にいる子どもたちと同じ目線から始まり、立派なレディへと成長した奇跡の年月を凝縮した名シーンでした。
卒業ステージでは、歴代の名曲である『だいすきの木』『ずっといっしょ』『またね』などを万感を込めて熱唱。終盤には大粒の涙を瞳に浮かべ、声をつまらせながらも最後まで笑顔を届けようとするゆきちゃんの姿に、会場の保護者席からもすすり泣きが漏れました。
この卒業理由について、一部で「突然の降板ではないか」と心配する声もありましたが、実際はNHK Eテレの伝統に基づく「極めて計画的で自然な交代サイクル」です。『いないいないばあっ!』の歴代女の子は、以下のような緻密なキャリアステップを踏むシステムが確立されています。
- 第1フェーズ(スタジオレギュラー):およそ小学1年生(6歳)から小学4年生(10歳)までの4年間、本放送のスタジオで歌と体操を担当。
- 第2フェーズ(ステージ移行):スタジオを卒業後、小学5年生(10歳)から中学2年生(14歳)までの4年間、全国を回る大規模ホール公演『ワンワンわんだーらんど』を担当。
- 第3フェーズ(完全卒業と次の道):高校受験を控える中学3年生への進級時、後任のスタジオ卒業生へバトンを繋ぎ、番組から完全に巣立つ。
ゆきちゃんもこの黄金則に完璧に沿う形で、スタジオ4年+ステージ4年の合計8年間という長期にわたりワンワンの隣を守り抜きました。そして2023年春、スタジオを卒業した7代目女の子「はるちゃん(倉持春希さん)」へとその役目が美しく継承されたのです。そこには何一つ不穏な理由はなく、1人の少女が子どもから大人の入り口へと至る、喜ばしくも尊い通過儀礼でした。