この潮流を語る上で欠かせないのが、対照的な魅力でシーンを牽引する坂口健太郎と綾野剛の存在である。
坂口健太郎が放つのは、どこまでも澄み切った「静」の求心力だ。ふとした眼差しの揺らぎや微細な沈黙だけで、登場人物のバックボーンを雄弁に物語る。観る者に余白を感じさせ、物語の世界へと自然に引き込む力は群を抜いている。
対する綾野剛は、予測不能なエネルギーを放つ「動」の権化だ。シャープな顔立ちの奥に宿る狂気や哀愁を瞬時に爆発させ、観客の感情を揺さぶる。一見すると対極にある二人の表現手法だが、どちらも「塩顔」特有の削ぎ落とされた造形美があるからこそ、キャラクターの複雑な内面が劇的に際立つ。