トントン、カラリ。工房の引き戸を開けると、澄んだ空気を切り裂くように機織りの音が響いていた。中能登町が世界に誇る麻織物「能登上布」である。蝉の羽にも例えられる極上の透け感と、肌にまとわりつかない独特のシャリ感。二千年の歴史を誇るこの伝統工芸もまた、地震によって工房や道具に甚大な被害を受けた。
だが、職人たちの指先は止まらなかった。崩れかけた作業場から織機を救い出し、散乱した糸を一本ずつ丁寧に解きほぐした。現在では、若い世代の職人やデザイナーが加わり、着物という従来の枠を超えた現代的なアパレルやインテリア雑貨の開発が精力的に進められている。伝統を守る最良の方法は進化し続けることだと、リズミカルに梭を操る職人の横顔が雄弁に物語っていた。