天王寺のランドマークといえば、空にそびえるあべのハルカスだ。ガラス張りの近代的な巨塔の足元から、わずか徒歩数分の場所に593年建立の四天王寺が構える。この圧倒的な対比こそが、この街の醍醐味である。四天王寺は聖徳太子が建立した日本最初の官寺であり、和宗の総本山。一歩境内足を踏み入れると、ビル群の喧騒が嘘のように消え去り、静謐な空気に包まれる。
だが、地元で長年愛される地域旅行・歴史ガイドの案内を聞けば、表層的な観光では見えない秘話が次々と浮かび上がる。例えば、四天王寺の伽藍配置は西日に向かって開かれており、極楽浄土を祈願する「夕日信仰」の聖地でもあった。かつて境内から見下ろした大阪湾に沈む夕日は、現代においてもあべのハルカスの展望台から見渡す夕景と地続きの感動を与えてくれる。古代の人々が見上げた空と、現代人が見下ろす街並み。建築の年代差は1400年以上あるが、この土地が持つ特別な精神性は脈々と息づいているのだ。