日本映画史における極道映画の原点を語るうえで、1970年代に猛威を振るった東映の実録路線は絶対に外せません。その頂点に君臨する深作欣二監督の『仁義なき戦い』シリーズは、従来の美化された任侠美談を打ち破り、剥き出しの欲望と暴力、裏切りが渦巻くリアルな人間模様をフィルムに焼き付けました。主役の広能昌三を演じた菅原文太をはじめ、松方弘樹、梅宮辰夫、小林旭、千葉真一、渡瀬恒彦といった錚々たる顔ぶれが揃った『仁義なき戦い』歴代キャスト陣の演技は、半世紀以上が経過した現在でも色褪せない迫力を放ち続けています。
当時、東映ヤクザ映画で伝説の俳優と呼ばれた面々は、演技の枠を超えた強烈なエネルギーをスクリーンにぶつけていました。実録ヤクザ映画に出演した俳優たちの武勇伝として有名なのが、台本を無視して本物の怒気をぶつけ合った凄まじい撮影現場のエピソードや、極寒の海に飛び込む過酷なスタントを自ら志願してこなした渡瀬恒彦の伝説的な身体能力です。また、悪辣な組長役で怪演を見せた金子信雄や、怜悧で冷酷な幹部を演じさせたら右に出る者がいなかった成田三樹夫など、脇を固める名優たちの濃密なアンサンブルが作品の格調を決定づけました。
時代の移り変わりとともに、昭和を代表するヤクザ映画の俳優たちの多くが死亡・引退により表舞台を去りました。菅原文太や松方弘樹、梅宮辰夫らが残した規格外の熱量は、現代の映画界においても「役者の覚悟とは何か」を問いかける不滅の教科書としてリスペクトされ続けています。