日中はなんとか耐えられていた痒みが、帰宅後の入浴中や就寝前に限って激化し、眠れなくなるケースは後を絶ちません。これには生体リズムと体温変化がもたらす明確な生理学的理由が存在します。
夕方から深夜にかけては、活動モードの交感神経からリラックスモードの副交感神経へと自律神経の主導権が交代します。副交感神経が優位になると、緊張から解放されて全身の血管が緩やかに拡張し、血流が増加します。ここに入浴による加熱が加わると、皮膚の温度が急上昇して毛細血管が一気に拡張。血管透過性が亢進し、血液中の血清成分が血管外へと染み出して皮膚組織が浮腫を起こすため、お風呂上がりの蕁麻疹とかゆみはピークに達します。
また、蕁麻疹が夜間に悪化する理由には、生体内の抗炎症ホルモンである「コルチゾール」の日内変動も関係しています。副腎皮質から分泌されるコルチゾールは炎症やアレルギー反応を抑える働きを持ちますが、分泌量は早朝に最も高く、夜間にかけて急激に低下します。身体の自然な抗炎症ガードが下がる時間帯に、体温上昇と副交感神経の働きが重なることで、抑え込まれていた痒みのシグナルが一斉に知覚神経を刺激する構造です。
加えて、発汗を促す神経伝達物質「アセチルコリン」が刺激となって現れるコリン性蕁麻疹の原因も無視できません。入浴、運動、精神的緊張などで汗をかこうとした瞬間、1〜4ミリ程度の小さな発疹が無数に出現し、針で刺されたようなピリピリとした痛痒さを伴うのが特徴です。入浴時の急激な温度変化や湯船の熱気は、疲弊した皮膚にとって強い刺激となるため注意を払う必要があります。