家庭菜園ブームのなかで、多くの市民農園利用者がバイブルとして仰ぐのがNHK『趣味の園芸 やさいの時間』だ。同番組で長年講師を務め、軽妙な語り口で知られる恵泉女学園大学の藤田智氏は、作物の生理生態に寄り添った無駄のない作業体系を提唱し続けている。
藤田氏が繰り返し説くのは「初期生育の見極め」だ。苗を植え付けてから最初の数週間、初心者はどうしてもハサミを入れるのを躊躇する。「せっかく伸びた枝を切るのは可哀想」という心理的ブレーキが、結果として株全体のスタミナを奪う。
枝を落とす行為は間引きではなく、植物に対する明確な意思表示だ。どこに果実を実らせ、どこを休ませるのか。メディアを通じて伝えられる科学的アプローチは、今やベランダ菜園愛好家から専業農家に至るまで、幅広く共有されるスタンダードとなった。