『三省堂国語辞典』の編纂者として街頭の生きた言葉を採取し続ける辞書編纂者の飯間浩明氏は、言葉が短縮され、別のコミュニティへ伝播していくダイナミズムを度々指摘している。地方の土着語が若者言葉としてリバイバルし、全国的なスラングへと昇華する過程には、常に音の心地よさとインパクトが作用している。
社会言語学の見地から観察すれば、これは言語接触による「脱文脈化」の典型例だ。文化庁が定期的に実施している国語に関する世論調査でも明らかなように、日本人のコミュニケーションに対する意識は世代間や地域間で著しい乖離を見せている。ある集団にとっての「小気味よいツッコミ」が、別の集団にとっては「耐えがたいハラスメント」と知覚される現象は、まさにこの脱文脈化が引き起こす摩擦に他ならない。