和彫りの龍が持つ独特のうねりと迫力は、江戸時代の絵師たちによって完成された。なかでも、幕末の奇才として名高い歌川国芳の影響力は絶大だ。国芳が描いた武者絵や豪快な水滸伝の豪傑たち、そして背後に渦巻く龍の筆致は、当時の彫師たちに決定的なインスピレーションを与えた。
浮世絵の大胆なデフォルメと、肉体の曲線を完璧に計算した「見切り(額)」の処理。雲や波、稲妻を背景に配置することで、龍の神聖さと凶暴性が極限まで引き出される。現代の優れた彫師たちも、国芳をはじめとする古典の筆遣いを徹底的に研究し、数百年前に確立された黄金比を肌の上に再構築しているのだ。