テレサ・テンが息を引き取ったのは、静養のために滞在していたタイ・チェンマイの老舗ホテル「ロイヤル・メイピン・ホテル(現インターコンチネンタル・チェンマイ・ザ・メイピン)」のスウィートルーム1502号室でした。持病であった気管支喘息の急性発作が命を奪う決定打となりました。
現地の宿泊記録やホテル従業員の証言によると、1995年5月8日の夕方、彼女は激しい呼吸困難に襲われ、助けを求めて部屋のドアを叩きました。異変に気づいたスタッフが駆けつけた際、すでに自力歩行が困難な状態に陥っていたと報告されています。直ちにチェンマイ・ラム病院へ救急車で搬送されたものの、折悪しく夕方の激しい帰宅ラッシュの交通渋滞に巻き込まれ、病院到着までに通常以上の時間を要しました。
救急救命室(ER)では懸命な心肺蘇生措置や強心剤の投与が行われましたが、同日17時30分(現地時間)、心不全による死亡が確認されました。当時交際していた約14歳年下のフランス人カメラマン・ステファン氏が外出中であったことや、遺族の意向で行政解剖が行われなかったことから、一時は憶測が飛び交いました。しかし、主治医による公式な死亡診断書および現場の客観的証拠により、重篤な喘息発作に伴う呼吸不全・低酸素脳症が直接の死因であることが明確に裏付けられています。