「男の子を妊娠すると塩辛いものが欲しくなる」「お腹が前に突き出すと男の子」など、SNSや育児掲示板で語り継がれる赤ちゃん性別ジンクスの真相を、生理学的な観点から検証します。
まず代表格であるつわりの男女の違いについてです。「男の子だとつわりが重い」「女の子だと肌が荒れる」といった言説が広く信じられていますが、産婦人科学においてつわりの主因は、妊娠初期に急増するヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)や黄体ホルモン、自律神経の急変とされています。スウェーデンのカロリンスカ研究所による100万人規模の妊婦データ研究など一部の疫学調査では「重症妊娠悪阻で入院した妊婦は女児出産割合がわずかに高い(約55%)」というデータもありますが、個人の日常的なつわりの強弱で男女を判定することは不可能です。
続いて頻出するお腹の出方と性別の関連性です。「前に尖るように突き出すと男の子、横にふんわり広がると女の子」という俗説がありますが、お腹のシルエットを決定づけるのは以下の3点です。
- 骨盤の骨格構造:骨盤が狭い妊婦は胎児が前にせり出しやすく、広い妊婦は骨盤内に収まりやすい。
- 腹壁の筋緊張度:初産婦や腹筋がしっかりしている人は前に張り出し、経産婦や腹壁が緩んでいる場合は横に広がりやすい。
- 胎児の姿勢(胎位):背中が母体の前面にあるか背面にあるかで外見の凹凸が変化する。
さらに「脈拍の性別ジンクス(胎児心拍数が140bpm以上なら女の子、未満なら男の子)」や「胎動が激しい性別は男の子」という説も散見されます。しかし、日本産科婦人科学会の基準でも胎児心拍数は110〜160bpmの間で激しく変動するのが正常であり、男女による有意なベースライン差は認められていません。胎動の感じ方も、胎盤の位置(前壁胎盤か後壁胎盤か)や母体の皮下脂肪の厚み、赤ちゃんの覚醒リズムによる差異が実態です。
歴史ある中国式産み分けカレンダー(清朝時代の宮廷で作成されたとされる受胎月と母体の数え年による早見表)も、現代の大規模後ろ向き研究(約280万件の出生記録を精査した海外研究など)により、その的中率は50.0%〜50.2%と、完全な確率的偶然であることが証明されています。