春日の退去によって空室となったむつみ荘201号室は、一般的な賃貸市場に流通することなく、即座に巨大なエンターテインメントの舞台へと転用されました。仕掛けたのはTBS系『水曜日のダウンタウン』です。2019年秋、「あのアパートの次の住人を決める」という趣旨のもと、「むつみ荘2代目住人決定オーディション」が開催されました。
熾烈な芸人同士の争いを経て、最終的に部屋を引き継ぐ権利を勝ち取ったのはお笑いコンビ・コウテイ(当時)の下田真生(現シモタ)でした。しかし、下田は当時よしもと漫才劇場(大阪)を主戦場としていたため、実質的な生活拠点としての定着には至りませんでした。その後、同じくオーディションに参加していたネコニスズのヤマゲンをはじめとする若手芸人たちが関わり、YouTube配信や番組の追跡企画などを通じて「春日以降のむつみ荘」が発信され続けました。
2代目の住人たちが直面したのは、単なる古びたアパートでの一人暮らしではなく、「全国区の象徴的アイコンを背負わされる重圧」でした。部屋のあちこちに残る春日の生活痕、勝手に訪れるファンからの視線、そして何より「オードリー春日ほどのドラマを生み出せるのか」というメディアからの無言のプレッシャーです。結果として、2代目住人の時代を経てアパートは「住居」から完全に「モニュメント」へと変質し、芸人が日常を営む場としての寿命を静かに縮めていくことになりました。