オーストラリアにおけるスシトレインの歴史は、1993年に始まります。創業者は日本人実業家のボブ・桑田(Bob Kuwata / 桑田博之)氏。彼が最初の店舗を立ち上げた場所は、世界的な観光保養地として知られるクイーンズランド州ゴールドコーストのサーファーズパラダイスでした。
当時のオーストラリアでは、寿司といえば一部の高級日本料理店で富裕層が口にするものか、あるいは「生魚を食べる奇妙な東洋の習慣」として敬遠される傾向が根強く残っていました。当時の地元紙のアーカイブや関係者の回想録によると、桑田氏は日本から本物の回転寿司用コンベアベルト一式を船便で輸送し、店内中央に巨大なレールを敷設。調理場をガラス張りにし、白衣をまとった職人が目の前で調理するライブ感を演出しました。
この演出は現地の外食シーンに強烈なブレイクスルーをもたらしました。英語が母国語であっても日本料理の専門用語(トロ、コハダ、イクラなど)が分からなければ注文しづらいという心理的ハードルを、「目の前を回る皿を直感で取るだけ」というシステムが一挙に解消したのです。生魚に抵抗がある客向けには、アボカドや照り焼きチキン、揚げたてのエビフライを巻いたロール寿司を開発。オーストラリア人の舌に合わせたローカライズ戦略が功を奏し、サーファーズパラダイスの1号店には連日長蛇の列ができました。
その後、同社はブリスベン、シドニー、ケアンズなど東海岸を中心にフランチャイズを展開。全豪で50店舗規模を誇る一大チェーンへと成長を遂げ、オーストラリアのファストカジュアル外食市場において「手軽で健康的な外食」の代名詞としての地位を確立しました。