「病院で高いのは緊張のせいだから、放っておいても大丈夫」という思い込みには、重大な落とし穴が潜んでいます。近年の追跡疫学調査によると、白衣高血圧と診断された人は、完全な正常血圧を維持している層と比較して、約5〜10年の経過観察期間中に持続性高血圧へ移行する確率が2〜3倍高いことが立証されています。
診察室という限定的なストレス環境で血圧が急上昇するという事実は、実社会における「上司との面談」「重要な商談」「人間関係の摩擦」といった日常的なプレッシャー下でも、同じように血管へ強い圧力がかかっている可能性を示唆します。血管内皮細胞が急激な圧迫と弛緩を繰り返すことで微小な傷が生じ、放置する動脈硬化リスクや将来的な冠動脈疾患・脳血管障害の引き金になることは見逃せません。
さらに恐ろしいのが、白衣高血圧の対極に位置する仮面高血圧の危険性です。診察室では医師の前で安心したり緊張が一時的に途切れたりして正常値(140/90mmHg未満)を示すものの、職場や家庭に戻ると基準値を大幅に超過しているタイプを指します。健診をすり抜けてしまうため発見が大幅に遅れ、気づいた時には心肥大や慢性腎臓病が進行しているケースが多発しています。「病院で測った数値」だけで健康を過信することは極めて危険です。