証券会社の口座残高だけを確認して安心していると、思わぬ資産の死角に足をすくわれることになります。実務の現場で長期間放置されやすいのが「特別口座株式」と「非上場株式」です。
2009年の株券電子化(ペーパーレス化)以前に、いわゆる「タンス株」として自宅で紙の株券を持っていたり、証券会社へ預け入れの手続きを行っていなかったりした株式は、発行会社の指定する信託銀行等の「特別口座」へ自動的に移行されています。特別口座はあくまで株式の権利を保全するための仮の保管場所に過ぎません。そのため、特別口座のまま市場で株式を売却することは法的に禁止されています。
信託銀行で特別口座の相続手続きを進める場合、相続人名義で証券会社に一般口座または特定口座を別途開設し、信託銀行からその証券口座へと「株式振替」を行って初めて売却や保有が可能になります。窓口が信託銀行と証券会社の2箇所にまたがるため、完了までに2〜3カ月以上の歳月を要するケースが一般的です。
さらに深刻なのが、親が経営していた会社や親族企業の「非上場株式(自社株)」です。非上場株式には市場価格が存在せず、会社の純資産や過去の配当、利益をもとに極めて複雑な税務評価を行います。経営が順調な中小企業の場合、株式の評価額が数億円に達していることも珍しくありません。「換金できないのに莫大な相続税だけが請求される」という自社株問題は、事前の生前対策を怠ると後継者の個人破産を招くほどの威力を秘めています。会社法上の譲渡制限が付いているため、名義変更には取締役会や株主総会の正式な承認決議が不可欠であり、親族間の経営権争いと直結しやすい点にも最大限の警戒を払わなければなりません。