なぜ入り鉄砲に出女を監視?幕府崩壊を防ぐ参勤交代の裏と関所の真相

なぜ入り鉄砲に出女を監視?幕府崩壊を防ぐ参勤交代の裏と関所の真相

なぜ入り鉄砲に出女を監視?幕府崩壊を防ぐ参勤交代の裏と関所の真相についての真相をお届けします。

通説では「入り鉄砲」と「出女」は同列の脅威として語られてきましたが、近年の交通史や近世史の学術研究では、現場における運用実態に大きな温度差があったことが判明しています。

驚くべきことに、実際の関所日記や幕府の記録を精査すると、「入り鉄砲」の摘発件数は極めて少なく、現場の警戒リソースの大半は「出女」に割かれていたのです。

なぜ鉄砲の取り締まりは形骸化に近い状態だったのでしょうか。当時の鉄砲や火薬は極めて重量があり、街道沿いを密輸すること自体が物理的に至難の業でした。さらに、大名行列が正規の鉄砲を携行して江戸に入るケースでは、老中が発行する「鉄砲証文」さえ提出すれば正当な手続きとして通過できました。つまり、武器の流入は書類審査の段階でほぼ統制されており、関所現場でゲリラ的に鉄砲を摘発する事態は滅多に起きなかったのです。

対照的に、常にリアルな脅威であり続けたのが「出女」の逃亡でした。女性は変装や影武者の仕立てが容易であり、山越えの裏道を案内する「抜け道屋」に頼んで関所を迂回しようとする密航者が後を絶ちませんでした。

箱根関所の周辺住民には「関所を避けて山を通る者を捕らえれば報奨金を出す」という触れが出されており、山狩りによって捕縛された逃亡者の記録が数多く残されています。関所破りは男女を問わず未遂であっても磔刑(はりつけ)という最も重い極刑に処されました。幕府にとって本当の悪夢は、鉄砲の密輸以上に「人質が消えること」だったのです。

加藤 愛美
著者

加藤 愛美

マーケティングと消費者心理のトレンドを分析し、現代のヒット商品の背景を読み解きます。