「卵を入れないとハンバーグがバラバラに割れてしまう」という言説は、調理科学の観点から見れば明確な誤解である。そもそもハンバーグの結着性を生み出している主役は、卵ではなく挽き肉自体に含まれる塩溶性タンパク質(ミオシン)だ。
食肉加工や調理科学の実験データによると、挽き肉に肉全体の重量比0.8%〜1.0%の食塩を加え、肉の温度が15℃を超えないよう冷たい状態で練り込むと、ミオシンが溶け出して網目状の構造を形成する。この網目構造が加熱時に脂質と水分をガッチリと抱え込み、乳化状態を保つことで、切った瞬間に溢れ出す極上の肉汁が誕生する。
むしろ、従来の卵を入れるレシピでは、卵白の熱凝固温度(約60℃〜80℃)に達した際、タンパク質が急激に収縮して内部の水分を押し出してしまうケースが散見される。卵を抜く、あるいは適切な保水素材へ置き換えるアプローチは、肉のパサつきを防ぎ、純粋な肉の旨味をダイレクトに舌へ届けるための極めて理にかなった手法なのだ。