インターネット上で「DTM作曲をなめるな」という過激なフレーズが検索トレンドに浮上し、時に激しい論争を引き起こす背景には、テクノロジーの進化がもたらした「手軽さの罠」が存在します。現代ではスマートフォンや手頃なパソコンさえあれば、高機能なDAW(デジタル・オーディオ・ワークステーション)を誰でも安価に入手できるようになりました。しかし、この入り口の広さが、かえって初心者に致命的な誤解を生む土壌となっています。
ボカロPとして活動するれお氏をはじめとする現場のクリエイターからは、「手軽に一発当てて金儲けをしたい」「手っ取り早くネット上で承認欲求を満たしたい」という動機のみで参入する層に対して、厳しい意見が投げかけられるケースが少なくありません。音楽制作は本来、作曲、編曲(アレンジ)、楽器のプログラミング(打ち込み)、音響調整など、かつては分業制で行われていた専門作業をたった1人で完結させる高度な創作行為です。宣伝広告で謳われる「直感的な操作で誰でも神曲が作れる」という言葉を真に受けて飛び込むと、理想と現実の落差に打ちのめされることになります。
音楽制作メディア「96bit-music」の論考でも指摘されている通り、このハッシュタグの本来の役割は、ビギナーを威嚇して締め出すことではありません。むしろ「最初から思い通りにいかなくて当たり前である」という実態を提示し、甘い見通しによる早期離脱を防ぐための防波堤として機能している側面が浮き彫りになっています。