ネット上のレシピでは「炊飯器にすべての材料を入れてスイッチを押すだけ」という文言が散見されますが、ここに多くの人が陥る決定的な落とし穴が潜んでいます。
最も深刻な誤解は、「調味料を入れてから米を水に浸す」という手順ミスです。料理情報サイト白ごはん.comなどでも厳格に注意喚起されている通り、米は塩分や醤油を含んだ調味液の中では吸水スピードが著しく低下します。十分に吸水していない芯のある米をそのまま炊飯すると、中心部が硬く周囲だけが崩れた「芯残りご飯」が完成してしまいます。必ず「白米の状態で30分以上浸水」させ、炊飯直前に調味料を加えて規定量まで水加減するのが鉄則です。
次に注意すべきは、「生鮭」と「塩鮭」の取り違えによる味の破綻です。スーパーで安価に手に入る切り身には、塩分ゼロの「生秋鮭」、軽く塩を打った「甘口銀鮭」、保存用の「辛口紅鮭」が混在しています。甘口塩鮭を使う際に生鮭用のレシピ通りに醤油を加えると、塩分過多で塩辛くて食べられない仕上がりになります。塩鮭を使用する場合は、前掲の比較表に準じて醤油の量を大さじ半分以下に減らし、酒を主軸に味を調える必要があります。
さらに、鮭の骨と皮の処理に関する誤った判断も挙げられます。「炊く前にあらかじめ皮と骨をピンセットで取り除くべき」という説がありますが、これは大きな間違いです。鮭の皮と骨の周囲には良質なゼラチン質とコラーゲン、旨味エキスが最も豊富に凝縮されています。切り身を丸ごと米の上にドンと乗せて炊き上げ、蒸らし時間の段階でしゃもじを使って皮と小骨を一気に引き抜くのが、手間の削減と旨味の抽出を両立させるプロの技術です。