全日本バレーボール選手権大会の歴史において、ファンの語り草となってきたのが学生勢による下克上劇です。早稲田大学、筑波大学、日本体育大学といったインカレ上位常連校や、高校総体を制した駿台学園などの超高校級チームは、時にトッププロの戦列を激しく脅かします。
あるプロチームの主将が敗戦後のミックスゾーンで漏らした「序盤に相手のサーブで完全に足を止められ、自分たちのバレーを見失ったまま呑まれてしまった」という生の告白は、この大会の恐ろしさを象徴しています。年間数十試合を戦うリーグ戦では、1セットを落としても修正する猶予がありますが、ノックアウト方式のトーナメントでは、わずか数本のミスから生じる心理的動揺がそのまま命取りになります。
戦術面でも明確な理由が存在します。プロチーム側には相手大学の直近データやローテーション別の配球傾向に関する詳細情報が乏しいのに対し、チャレンジャーである学生側は何カ月も前からプロの試合映像を徹底的に研究し、特定のレセプション(サーブレシーブ)陣を狙い撃ちにするピンポイント戦術を完遂してきます。「失うものが何もない」挑戦者のアグレッシブなサーブがライン際を捉え始めた瞬間、コートの空気は一変するのです。