インターネット上や海外渡航者の間で囁かれる「アメリカ人は昔より背が低くなっているのではないか」という噂。これは単なる都市伝説ではなく、近年のアメリカ人平均身長推移が示す厳然たる真実です。CDCの長期追跡調査でも、米国の平均身長は1980年代以降ほぼ停滞し、一部の調査期間ではわずかな低下傾向すら観測されています。
先進諸国の国民身長は経済発展と衛生改善に伴って右肩上がりに伸びるのが通例でした。なぜ超大国アメリカで、身長の頭打ちや低下現象が起きているのでしょうか。専門の研究者や公衆衛生学者の分析からは、アメリカ人身長低下の理由として以下の3大要因が指摘されています。
第一の要因は、人口動態(デモグラフィクス)の劇的な変化です。過去40年間にわたり、中南米からのヒスパニック系移民やアジア系移民の比率が爆発的に上昇しました。後述するように、ヒスパニック系男性の平均身長は全体平均より低いため、国家全体の人口構成比が変わったことで、統計上のマクロな平均値が押し下げられています。
第二の要因は、深刻化する社会経済格差と「栄養の質の崩壊」です。アメリカでは富裕層と低所得層の二極化が急速に進みました。全米の低所得地域には、新鮮な生鮮食品が手に入らない「フードデザート(食の砂漠)」と呼ばれる地域が点在します。成長期の子どもたちが安価な超加工食品、精製された糖分、ファストフードばかりを摂取する結果、カロリー過多でありながら微量栄養素や良質なタンパク質が決定的に不足する「新型栄養失調」が蔓延しています。
第三の要因は、小児肥満の急増による思春期早発と骨端線の早期閉鎖です。小児科医や内分泌内科の研究グループが警鐘を鳴らしているのが、幼少期の極端な肥満がもたらすホルモンバランスの乱れです。体脂肪過多によって性ホルモンの分泌が前倒しされると、成長期が通常より早く訪れ、身長を伸ばす「骨端線」が早い段階で閉じてしまいます。幼少期に一時的に背が高くなっても、最終的な成人の到達身長が伸び悩むケースが多発している事実は、米国の公衆衛生における深刻な宿痾となっています。