「地方に行けば家賃も物価も安く、月10万円もあれば暮らせる」という言説は、もはや過去の神話と言わざるを得ません。資材価格やエネルギーコストの高止まりが続く現在、地方での暮らしには相応の初期投資と維持コストが求められます。
まず押さえておくべきは、スローライフに必要な資金の現実的な水準です。古民家を取得して住む場合でも、耐震改修や水回りの配管工事、断熱リフォームなどで数百万円規模の出費が発生します。さらに、公共交通機関が脆弱な地域では世帯人数分の自家用車の保有が必須となり、車両購入費・保険料・ガソリン代が家計を圧迫します。寒冷地であれば冬季の灯油代やプロパンガス代だけで月4〜6万円に達することも珍しくありません。
次に、スローライフ中の仕事と収入のバランスです。地方雇用の賃金水準は都市部に比べて依然として低く、現地採用でフルタイム勤務を選択すると世帯年収が大幅にダウンするリスクを伴います。そのため、現役世代が安定した生活を維持するには、都市部の仕事を完全リモートで継続するか、Web制作やコンサルティングなどの自営業務と現地での軽作業を掛け合わせる「複業(マルチワーク)」の設計が前提となります。