借り上げ社宅は従業員と企業の双方に極めて大きな金銭的利点をもたらしますが、制度である以上、必ず裏腹の制約が存在します。表面的な節税効果だけに目を奪われると、後から思わぬ不都合に直面することになります。
まず大きなメリットとして挙げられるのが、敷金・礼金・更新料の会社負担です。一般の賃貸契約では、家賃の3〜5ヶ月分に及ぶ初期費用が発生しますが、法人契約の場合は会社が契約主となるため、これらの費用はすべて会社の経費(敷金は返還されるため資産計上、礼金は税務上の繰延資産または地代家賃)として処理されます。入居する従業員は、まとまった貯蓄を切り崩すことなく新生活をスタートできます。
一方で、見逃せないデメリットも確実に存在します。従業員目線での主な制約は以下の3点です。
1. 物件選択の自由度が狭まる:企業の「社宅管理規程」により、家賃上限、面積、築年数、最寄り駅からの徒歩分数などが制限される。ペット飼育やDIYが禁止されるケースも多い。
2. 将来の厚生年金受給額への影響:社会保険料(標準報酬月額)が下がる裏返しとして、将来受け取る老齢厚生年金の年金額がわずかに減少する。
3. 住宅ローン控除の併用不可:当然ながら自己所有物件ではないため、持ち家を購入した際の住宅ローン減税などの恩恵は受けられない。
また、企業側にとっても「物件の選定・契約審査・毎月の家賃振込・規程管理」といった総務・人事部門のバックオフィス負担が発生する点は無視できません。そのため、近年では社宅代行サービス(アウトソーシング)を活用して管理コストを相殺する企業が増加しています。