巷で頻繁に議論される男性ホルモン多い顔はイケメン説の真相について、現実は決して単純な二者択一ではありません。映画俳優やトップアスリートに代表される「彫りが深く顎先がシャープな男性」は確かに魅力的ですが、テストステロンの作用が過度に強調されると、顎やエラが過剰に肥大化し、「ゴツすぎる」「威圧感が強すぎる」といった無骨な印象を与えてしまうケースも少なくありません。
美的な評価を左右するのは、ホルモン分泌の絶対量ではなく「バランス」です。過度なアンドロゲン化は、現代の日本社会で好まれやすい「中性的な端正さ」「柔らかい親しみやすさ」とは対極に位置します。彫りの深さが適度な立体感を生み出し、清潔な肌と調和している場合にのみ、世間一般に言う「正統派イケメン」として結実します。
また、避けて通れないのが薄毛と男性ホルモンの関係についての真相です。「体毛や髭が濃い男は将来頭頂部が薄くなる」という俗説は、生化学的な観点から言えば半分正解で半分誤りです。先述の通り、顎髭の毛根ではDHTが成長を促進する働きをしますが、前頭部や頭頂部の毛根では全く逆の現象が起きます。DHTが頭皮の受容体に結合すると、脱毛シグナルである「TGF-β」を放出し、毛髪のヘアサイクルを極端に短縮させてしまうのです。
ただし、ここで決定的な要素となるのは血中テストステロン濃度そのものではなく、毛乳頭に存在するアンドロゲン受容体の感受性(遺伝的要因)です。たとえ男性ホルモンの分泌量が人一倍多くても、遺伝的に受容体の感度が低ければAGAを発症することはありません。逆にテストステロン値が標準的であっても、受容体の感度が高ければ薄毛が進行します。髭の濃さと薄毛が連動して見えるのは、DHTという同一の代謝物質がそれぞれの部位に作用しているからに過ぎず、「ホルモンが多い=必ずハゲる」という因果関係は科学的誤謬です。