まずは、このフレーズが使われている有名な場面をおさらいしておこう。
「小柴垣のもとによゐのまどゐして、人々のもの言ふ声々、いとあらはに聞こゆ。」
これは、光源氏が熱病(瘧・おこり)の治療のために北山を訪れ、そこで後に最愛の妻となる若紫(のちの紫の上)を垣間見る直前のシーンだ。
現代語訳すると、「小柴垣のあたりで、夜遅くまで人々が集まって話し合っている声が、たいそうはっきりと聞こえる」となる。静かな山里の夜に、人々の話し声が漏れ聞こえてくる様子が、まるでカメラのズームレンズが動くかのように鮮明に描かれている。