潮干狩りで獲ってきたマテ貝を一般的な貝類と同じように「海水濃度の塩水(約3%)に浸けて一晩置いたのに、食べたら砂だらけだった」という失敗談は枚挙にいとまがありません。この現象が起きる最大の理由は、マテ貝の特殊な解剖学的構造にあります。
アサリやハマグリは殻を固く閉じて外敵から身を守り、入水管と出水管だけを伸ばして呼吸と砂吐きを行います。一方、マテ貝(オオマテガイ属を含むマテガイ科)は細長い円筒形の殻を持ち、上下が常に開口しています。太い筋肉質の「足」と「水管」が常に外気に触れており、砂の中に深く潜る習性があるため、殻と外套膜(がいとうまく)の隙間や水管の根元に砂粒が物理的に挟まりやすい構造をしているのです。
塩水に浸けておくと管からある程度の砂を吐き出しますが、殻の奥深くに巻き込まれた砂や泥は、貝が生きて呼吸しているだけでは自然に排出されません。つまり、マテ貝の砂抜きにおける最大のコツは、「貝自身に吐かせる工程」と「物理的に洗い流す下処理工程」を明確に分けることにあります。