家庭洗濯で最も頻発する誤解が、「洗濯機に『ドライコース』があるから、ドライマークの服も自宅で洗えるはずだ」という思い込みです。パナソニックなどの大手家電メーカーも啓発を続けていますが、この誤認こそがウールやカシミヤを硬直・収縮させる主原因となっています。
洗濯表示における「ドライクリーニング(丸の中にPやF)」とは、水ではなく石油系溶剤などの有機溶剤を用いて汚れを落とす、クリーニング店特有の専門技術を指します。一方、家庭用洗濯機に搭載されている「ドライコース」「おうちクリーニングコース」「おしゃれ着コース」は、あくまで「常温の水」を使い、ドラムの回転やパルセーターの揺れを極力抑えて優しく洗う機能にすぎません。
自宅で洗えるか否かの判定基準は極めてシンプルです。
- 洗える条件:「桶マーク」に数字や下線が入っているもの、あるいは「桶に手が入った手洗いマーク」があるもの。
- 洗えない条件:「桶マークに大きな×(バツ印)」が付いているもの。
桶マークにバツ印が付いている衣類は、水に浸すだけで繊維が膨潤し、ウールのスケール(毛羽のウロコ)が絡み合ってフェルト化したり、レーヨンが著しく縮んで光沢を失ったりします。洗濯機のコース設定をどれほど弱くしようとも、水を使った時点でダメージは不可逆です。
手洗いマーク(桶に手が入った記号)が付いている場合は、40℃を限度とするぬるま湯または水を用い、中性洗剤(おしゃれ着用洗剤)を使って軽く押し洗いします。この際、最も注意すべきは脱水工程です。洗濯機で通常の5〜6分脱水をかけると強い遠心力で生地が引き裂かれたり深いシワが定着したりするため、脱水時間は15秒から最長でも30秒程度にとどめ、タオルに挟んで水分を取る「タオルドライ」を併用するのが基本作法です。