日の出とともに響く大合唱と、深夜の静寂を切り裂く不気味な声。カラスが朝鳴く理由の中心にあるのは、集団ねぐらから餌場へと移動する際の情報交換と縄張り防衛です。多くのカラスは郊外の森林や大規模な緑地を「ねぐら」とし、夜明けとともに都市部の餌場へと飛び立ちます。飛び立つ直前、リーダー格の個体や周囲の仲間が鳴き交わすのは、出発の合図やグループの結束確認にほかなりません。現地に到着した後は、電柱やビル屋上から鳴き声を轟かせることで「ここは自分の採餌エリアだ」と周囲に主張し、無用な衝突を未然に防いでいます。
一方、本来は昼行性であるはずのカラスが夜鳴く理由には、現代都市特有の環境変化が色濃く影を落としています。最大の要因は「都市の過剰な明るさ」です。街頭防犯カメラの普及や省エネ化に伴い、高輝度白色LED街灯が普及した結果、都市部の夜間照度は飛躍的に上昇しました。人間にとっては薄暗い夜道であっても、視覚の優れたカラスにとっては「周囲を視認できる明るさ」となり、体内時計の乱れから夜間に活動・発声してしまうケースが報告されています。
もう一つの決定的な要因は、夜行性の天敵による刺激です。近年、都市部ではアライグマやハクビシン、フクロウ類といった外敵の目撃例が増加しています。眠りについているねぐら付近にこれらの捕食者が接近したり、突発的な強風や地震の初期微動(P波)で枝が揺れたりすると、パニック状態に陥ったカラスが一斉に警戒音を発します。闇夜に響く声は不吉な予兆ではなく、彼らが身の危険を感じて必死に発した警報なのです。