華やかなスクリーンの裏側で、トト役のテリーが挑んだ撮影現場は困難の連続でした。当時のテクニカラー撮影は膨大な光量を必要としたため、スタジオ内は猛烈な照明熱で50度近い灼熱地獄と化していました。さらに、爆発演出の煙や巨大な送風機による竜巻の再現など、聴覚の鋭い犬にとっては極度のストレスがかかる過酷な環境でした。
撮影中には深刻なアクシデントも発生しています。西の悪い魔女の城でのシーンにおいて、城の衛兵(ウィンキー・ガード)役の役者が誤ってテリーの足を踏みつけてしまい、足を骨折(捻挫とも伝わる)する大怪我を負ってしまったのです。急遽代役のスタント犬が立てられましたが、テリーはトレーナーの献身的な看護によってわずか数週間で現場へ奇跡の復帰を果たしました。
負傷療養中、ドロシー役のジュディ・ガーランドはテリーを自宅に引き取って自ら看病したといいます。ジュディはテリーの愛らしさと賢さに深く惚れ込み、撮影終了後に「テリーを買い取りたい」とスピッツ氏に懇願したものの、スピッツ氏にとってテリーは家族同然の存在であったため、丁重に断られたという心温まるエピソードも残されています。