松方弘樹さんの逝去後、世間の涙を誘ったのは、最も近くで彼を見守り続けた家族や親友たちの悲痛な証言でした。実弟であり俳優の目黒祐樹さんは、記者会見の場で兄の闘病について声を詰まらせながら詳細を語りました。
目黒さんの証言によると、意識がはっきりしている時期の松方さんは、病床にあっても弱音を一切吐かず、ベッドの上で台本をめくる仕草や、セリフを反芻するように唇をかすかに動かす姿を見せていたといいます。松方さんが関係者に遺した実質的な最後の言葉は、「早く現場に戻りたい。みんなに迷惑をかけて本当にすまない」という、仕事への強い執念と周囲への気遣いに満ちたものでした。
また、東映時代からの無二の親友であり、『仁義なき戦い』やバラエティ番組でも名コンビを組んだ梅宮辰夫さんの悲痛な姿は、日本中を揺さぶりました。梅宮さんは追悼会見で大粒の涙を流しながら、次のように語りかけました。
「弘樹、なんで俺より先に逝っちまうんだよ……。お前がいない映画界なんて、本当につまらないよ。また一緒に沖縄の海でマグロを追おうって約束したじゃないか」
公私にわたり昭和の熱気を共有し、互いにがんを経験した戦友だからこその叫びは、松方弘樹という人間の懐の深さと、彼が遺した喪失感の大きさを如実に物語っていました。