『ハッピーシュガーライフ』が純愛劇にとどまらず、第一級のサスペンスホラーとして戦慄を呼んだ要因には、周囲の人間たちが辿った容赦のない破滅があります。なかでも読者に最大のトラウマを与えたのが、飛騨しょうこの死亡経緯と三星太陽の精神崩壊です。
さとうの唯一の親友であった飛騨しょうこは、家庭環境に恵まれながらも心を通わせ合える友としてさとうを深く気遣っていました。行方不明の少女のチラシを見たしょうこは、さとうの不穏な行動を察知し、彼女を救いたい一心で1208号室へと足を踏み入れます。そこで目撃したしおの姿により、さとうの秘密を知ってしまったしょうこは、「警察には言わない、さとうの力になりたい」と涙ながらに訴えかけました。
しかし、さとうにとって自らの「城」に土足で踏み込まれることは、絶対不可侵の愛への宣戦布告と同義でした。次の瞬間、さとうは躊躇なくしょうこの喉元を刃物で切り裂きます。親友の善意と真情を無慈悲に踏みにじったこの凶行は、さとうの狂気がもはや引き返せない領域に達したことを決定づけた名シーンとなりました。
一方、もう一人の重要人物である三星太陽は、かつてバイト先の年上女性店長から受けた過酷な監禁と性被害という壮絶な過去を抱えていました。大人の女性に対する重度のトラウマを抱えた太陽は、街で見かけたしおのチラシに「汚れなき天使」を見出し、異常なまでの信仰心を抱くようになります。しかし、さとうの叔母に遭遇して精神を完全に破壊され、最終的には炎上するマンションの瓦礫のなかでしおの靴下を抱きしめながら正気を失うという、救いのない結末を迎えました。