ファンが最も知りたがっている核心、それは「なぜ高田延彦はあれほど愛された決め台詞を叫ばなくなったのか」、そして「なぜRIZINの現場を去ったのか」という疑問です。ネット上では「喉の病気説」や「運営首脳との対立説」など多種多様な憶測が飛び交いましたが、真相は極めてプロフェッショナルな興行論と個人のフィジカルな限界にありました。
まず、直接的な肉体要因として出てこいやを言わなくなった理由に挙げられるのが、声帯への激しい負荷です。さいたまスーパーアリーナや東京ドームの数万人規模の空間に響き渡らせるあの咆哮は、腹筋と喉頭部を極限まで酷使するものであり、60代を迎えた高田の肉体にとって毎回血管が切れかねないほどのエネルギーを消費する行為でした。後年のインタビューでも「あの一言を放つために、どれほど裏で心身を削っていたか」と語っており、年齢的な限界を感じていたのは動かしがたい事実です。
そしてもう一つ、高田延彦のRIZIN降板理由における決定打となったのが、「興行の世代交代」でした。2015年の立ち上げ当初、RIZINにはまだ全国的な知名度を持つ看板選手がおらず、高田のカリスマ性と「出てこいや!」のブランド力に頼らざるを得ない構造がありました。しかし、朝倉未来・海の兄弟、堀口恭司、平本蓮といった自前で莫大なPPV(ペイ・パー・ビュー)を売る新世代ファイターたちが育ったことで、高田は自らの役目が終わったことを誰よりも早く悟ったのです。
「いつまでも昭和・平成の遺産にすがり、年老いた元レスラーが主役面をしていては、新しい時代の格闘技は育たない」。榊原信行CEOをはじめとする運営陣とも綿密な対話を重ねた末、団体の自立を見届けて静かに身を引くという、清々しいまでの引き際を選び取ったのが離脱の真相でした。