かんのやの創業は、幕末動乱期の文久元年(1861年)に遡ります。福島県田村郡三春町の地で誕生して以来、代々受け継がれてきた製法を守り続け、福島を代表する菓子司としての地位を確立してきました。
多くの人がまず目を奪われるのが、ゆべしとしては極めて珍しい「三方をつまんだ立体的な三角形」のフォルムです。この形状には、平安時代の武将・坂上田村麻呂にまつわる故事や、三春の地に舞い降りた瑞鳥「鶴」が翼を広げて羽ばたく姿を模したという深い由来が存在します。単なる意匠ではなく、繁栄と平和への祈りを込めた造形美が、現代の食卓にも受け継がれているのです。
また、日本全国で見られるゆべし(柚餅子)は、柚子を用いた保存食や、東北地方に多い平たい四角形の「くるみゆべし」が主流です。これに対し、かんのやの家伝ゆべしは、薄く伸ばした上新粉ともち粉の生地で上質なこし餡を包み込み、表面にケシの実を散らして蒸し上げるという独自の進化を遂げました。この「包みゆべし」の文化こそが、福島中通り地方の豊かな食文化を象徴しています。