喉が乾いたからといって水やお茶ばかりを大量に飲むと、かえって体調が悪化することがある。血中のナトリウム濃度が極端に下がり、体内の電解質バランスが崩れて「自発的脱水」と呼ばれる現象を引き起こすためだ。
ここで重要になるのが経口補水液(ORS)である。小腸の粘膜において、ナトリウム(塩分)とブドウ糖(糖分)が1:2の分子比率で共存すると、水分が劇的なスピードで細胞内へと吸収される。このメカニズムを発見し、発展途上国でのコレラ治療に革命をもたらしたのが米国の医学者ロバート・A・フィリップス医師だ。その後、世界保健機関(WHO)が中心となって立ち上げたWHO/UNICEF経口補水療法推進プロジェクトにより、世界中で数え切れないほどの命が救われてきた歴史がある。