京都のわらべ歌「丸竹夷二押御池」の歌詞の意味をご存知でしょうか。これは、京都市中心部(洛中)を東西に走る幹線道路や小路の名称を、北から南へと順番に並べた言葉遊びの歌です。単なる語呂合わせではなく、各通りの頭文字や愛称を巧みに組み合わせて作られています。
前半部分である「丸竹夷二押御池(まるたけえびすにおしおいけ)」から「姉三六角蛸錦(あねさんろっかくたこにしき)」、そして「四綾仏高松万五条(しあやぶったかまつまんごじょう)」までの対応関係を整理すると、京都の繁華街から歴史地区の骨格がそのまま浮かび上がってきます。
【丸竹夷二押御池(まる たけ えびす に おし おいけ)】
・丸(まる):丸太町通(京都御所の南端を画する大通り)
・竹(たけ):竹屋町通(かつて竹細工職人が多く集まった職人街)
・夷(えびす):夷川通(家具・建具の専門店が連なる歴史ある通り)
・二(に):二条通(二条城の南東側、かつて薬種商で栄えた通り)
・押(おし):押小路通(平安時代の押小路烏丸殿に由来する路地)
・御池(おいけ):御池通(神泉苑の池にちなむ、現在の京都市内屈指のメインストリート)
【姉三六角蛸錦(あね さん ろっかく たこ にしき)】
・姉(あね):姉小路通(静かな町家が残り、景観保全に力を入れる通り)
・三(さん):三条通(東海道の終点・三条大橋に直結する商業の中心地)
・六角(ろっかく):六角通(聖徳太子建立の頂法寺・六角堂が鎮座する)
・蛸(たこ):蛸薬師通(蛸薬師堂永福寺が名の由来)
・錦(にしき):錦小路通(「京都の台所」として名高い錦市場が東西に貫く)
【四綾仏高松万五条(し あや ぶっ たか まつ まん ごじょう)】
・四(し):四条通(八坂神社から松尾大社へと続く京都随一の超繁華街)
・綾(あや):綾小路通(綾織物にちなむ、閑静な住宅と飲食店が混在する小路)
・仏(ぶつ):仏光寺通(真宗佛光寺派の本山・佛光寺の門前通り)
・高(たか):高辻通(平安京の辻の一つ、かつての花街名残を留める)
・松(まつ):松原通(平安時代の本来の「五条大橋」が架かっていた通り)
・万(まん):万寿寺通(かつて五山の一つであった大寺院・万寿寺に由来)
・五条(ごじょう):五条通(豊臣秀吉の都市改造により新設された現在の国道1号線)
このように、北の丸太町通から南の五条通まで、計18本の通りがわずか3行のリズムで完璧に記憶できるよう設計されています。京都通り名数え歌が子どもたちの間で口承されてきた理由は、日々の生活圏を迷わず把握するための生活の知恵でした。