ネット上のレトロドラマ解説や掲示板などで散見されるのが、「スケバン刑事IIIは忍者路線に走って迷走したのではないか」という俗説です。初代の硬派なリアリズムを好む層から、伝奇設定への急激なシフトが唐突に見えたことが理由とされています。しかし、当時の客観的な商業データやメディア環境を精査すると、この見方は明確な誤解であることが分かります。
第一に、当時の少年漫画界では『北斗の拳』『聖闘士星矢』といった伝奇・バトルファンタジーが空前の大ヒットを記録しており、フジテレビと東映はターゲット層を中高生から小中学生、さらにはファミリー層へと拡大する明確な戦略を持っていました。忍法や超常的な必殺技の導入は、玩具展開やマーチャンダイジングを含めたメディアミックスとしての周到な勝算に基づいていたのです。
第二に、音楽チャートにおける爆発的な成功です。浅香唯が歌った主題歌『STAR』『瞳にSTORM』『虹のDreamer』はチャートを席巻し、『虹のDreamer』では自身初となるオリコン週間シングルチャート1位を獲得しました。さらに風間三姉妹名義でリリースされた『Remember』もオリコン1位を記録。ドラマ発のアイドルユニットとして頂点を極めました。当時の年間売上や関連グッズの収益データはシリーズ最高峰であり、「忍者路線」は迷走どころか、商業的ポテンシャルを最大化させた大成功の転換点であったと言えます。