SNSや知恵袋などで「地上波放送禁止の噂」がまことしやかに語り継がれる最大の原因は、視聴者が体感する情報接点の地域格差と放送枠の特殊性にあります。
実際、映画『室井慎次 敗れざる者』『室井慎次 生き続ける者』が連続公開された際、フジテレビは関東ローカルの「ハッピーアワー」枠などで大規模な連続ドラマ全話再放送を敢行しました。しかし、この放送は全国ネットではなく関東広域圏を中心とした限定的な編成であったため、地方在住のファンからは「番組表に載っていない」「自分の地域では放送されていない」という不満の声がSNSに溢れました。
地方系列局では自社制作ワイドショーや独自編成が優先されるケースが多く、キー局が再放送を実施していても全国一律で視聴できるわけではありません。この「放送された地域」と「放送されなかった地域」の断絶がネット上で混ざり合い、「公式に封印された」「テレビで流せない理由があるに違いない」という誤ったナラティブへと変質していったのです。
また、近年のテレビ視聴者のタイムシフト化も影響しています。リアルタイムでテレビを点けて偶然出会う機会が減少し、能動的にTVerの見逃し配信や有料サブスクを検索する習慣が定着した結果、地上波の波に乗らない作品が「消えたコンテンツ」と認識されやすくなっています。