医学教育における「fresh cadaver(フレッシュカダバー)」とは、ホルマリンなどの防腐液による固定処理を施さず、マイナス数十度の超低温で特殊冷凍保存されたご献体を指します。国内の臨床医学現場では主に「新鮮凍結遺体(Fresh Frozen Cadaver: FFC)」または「新鮮献体」と呼ばれています。
医学生が大学の解剖学実習で向き合う従来のご遺体は、組織の腐敗を防ぎ長期保存を可能にするため、血管からホルマリンなどの固定液を注入する処理が施されています。この「ホルマリン固定遺体」は人体の解剖学的構造(筋肉、血管、神経の走行)を学ぶ上では極めて有用ですが、組織が硬化して関節は動かず、皮膚や内臓の色調も生体とは大きく変色してしまう欠点がありました。
対照的に、新鮮凍結遺体は防腐剤を使わないため、解凍すると生きている患者の筋肉の柔らかさ、皮膚の弾性、組織の滑走性(すべりやすさ)、さらには脂肪組織の質感までが生体とほぼ同等の状態に戻ります。これが外科手術手技のシミュレーションにおいて、劇的なパラダイムシフトをもたらしました。