ネット上の情報空間では、「海藻=甲状腺に危険」という大雑把な括り方が散見されますが、これは医学的な現場感覚と大きく乖離しています。甲状腺疾患専門の医師が臨床上で最も警戒しているのは、わかめではなく「昆布の過剰摂取」です。
前述の海藻類ヨウ素含有量比較の数値からも明らかなように、昆布に含まれるヨウ素の濃度は乾燥わかめの20倍以上、種類によっては数十倍に達します。乾燥昆布はわずか1.5g口にしただけで、成人の1日あたりの耐容上限量(3,000μg)を軽々と突破します。濃厚な昆布出汁を毎日煮出してスープのベースにしたり、健康法として「根昆布水」を毎朝飲用したり、昆布チップスを間食にポリポリと食べ続けたりする行為は、極めて短期間で甲状腺機能を破綻させる引き金になり得ます。
それに対して、わかめはヨウ素の含有率が海藻類の中では中程度に位置します。家庭料理の味噌汁やお吸い物にひとつまみ入っている程度のわかめを毎日一杯食べたからといって、健康な成人が甲状腺疾患を発症することは原則としてありません。ネット上で「わかめ=毒」のように過剰に恐れられている事象の多くは、昆布による過剰摂取リスクと混同されているか、乾燥わかめを水で戻したときの体積膨張率(約10倍〜12倍)を計算に入れずに山盛り食べてしまった極端なケースが一人歩きした結果です。