ネット上の掲示板やSNSで散見される誤解の一つに、「国内の医学部受験に失敗したからアメリカへ逃げたのではないか」という穿った見方があります。しかし、日米の医学教育システムの構造的な違いを知れば、この言説がいかに表層的な偏見であるかが明白になります。
日本国内の医学部は高校卒業後すぐに6年制の学部へ進学するシステムが主流ですが、アメリカには学部レベルでの「医学部」は存在しません。米国で医師を目指す場合、まず4年制大学でリベラルアーツや生物学、化学などの基礎学士号を取得(プレメド課程を履修)し、その後に過酷なMCAT(医科大学適性試験)を突破して4年制のメディカルスクール(医科大学院)へ進むのが正規のルートです。
つまり、アメリカの大学へ進学したことは医師への道を放棄したことを意味せず、むしろ学問的視野を広げた上で将来を選択する極めて合理的かつグローバルな進路設計と言えます。医学だけでなく、ビジネスやアート、テクノロジーなど多様な学問に触れた上で最終的なキャリアを選択できる米国の教育環境は、幼い頃から「医師になること」を宿命づけられていた彼にとって、真の自主性を育む最良の土壌となっているのです。