データ侵害に関して、一般ユーザーの間で最も誤解されているのが「情報が流出した際の補償」に関する認識です。ネット上では「大企業から個人情報が漏れたら、手厚い賠償金が支払われるはずだ」「訴訟を起こせば数十万円はもらえる」といった楽観的な憶測が散見されますが、これは法的な実態と大きく乖離しています。
現実における個人データ流出の慰謝料相場は、漏洩した情報がクレジットカード番号や金融機関口座の暗証番号などでない限り、氏名・住所・電話番号程度であれば1人あたり500円から数千円相当の金券で幕引きが図られるケースがほとんどです。過去の著名な情報流出事件の集団訴訟でも、裁判所が認めた精神的苦痛に対する損害賠償額は1人あたり数千円にとどまっており、流出したデータがダークウェブで転売され続ける生涯リスクと比較して、司法による救済は極めて限定的と言わざるを得ません。
また、企業のWebサイトに掲載されている「利用規約」や「プライバシーポリシー」についても重大な盲点が存在します。法改正に伴い、利用目的の明確化や安全管理措置の開示、共同利用者の範囲といったプライバシーポリシーの必要項目は形式的に整備されているものの、その文章は難解な法律用語で埋め尽くされています。多くのユーザーが内容を理解しないまま「同意する」をクリックしており、実質的なインフォームド・コンセント(十分な説明に基づく同意)として機能していないのが冷徹な実態です。