昭和から平成にかけての日本プロ野球では「正捕手は全試合フルイニング出場してこそ一人前」という価値観が支配的でした。しかし、阿部慎之助監督はその旧来の美学を明確に否定しています。
指揮官が併用制にこだわる最大の理由は、「143試合を戦い抜くための肉体的・精神的エネルギーのマネジメント」にあります。阿部監督自身、現役時代に正捕手として毎試合重いプロテクターを身につけ、打撃でも主軸を担う過酷さを骨身にしみて知っています。首、膝、腰の痛みに耐えながらマスクを被り続けた経験から、捕手というポジションの過度の酷使がシーズン終盤の集中力低下やチーム全体の失速に直結することを誰よりも理解しているのです。
報道陣の取材に対し、指揮官はしばしば「捕手はグラウンドの監督であり、頭脳を休ませる日が必要だ」という主旨の言葉を口にしています。酷暑が続く真夏の長期遠征において、週に1〜2試合の休養を挟むことで、岸田も大城もクリアな思考とキレのある動きを維持できます。さらに、試合終盤に代打を出されたり守備固めを送られたりしても、選手同士が不満を抱くのではなく、「勝つための役割分担」として受け入れるチーム文化が醸成されている点も見逃せません。