象徴的なタイトルである『水のないプール』には、作中で描かれる人間の精神状態を表す乾きと閉塞感が込められています。本来であれば生命感や潤いで満たされているはずの場所から水が完全に抜かれ、無機質なコンクリートだけが取り残された空間――それは、ジュンをはじめとする大都市で生きる人々の「満たされない孤独」そのものです。
若松組ならではの低予算・ゲリラロケ体制も、映画の生々しさを際立たせています。許可の難しい新宿や六本木の路上、実際の地下鉄駅周辺など、1980年代初頭の雑多な東京の街並みをそのまま背景として切り取りました。作り込まれたセットでは出せない、冷え切った都会の空気感が画面全体に満ちています。