公立小学校の学級定員引き下げは、2021年4月に施行された「公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律(義務教育標準法)」の改正によって幕を開けました。それまで小1のみに適用されていた35人枠を、2021年度の小学2年生から毎年度1学年ずつ引き上げ、2025年度の小学6年生をもって小学校全学年の35人学級化が完了しました。
文部科学省の基本方針は、小学校での成果を踏まえて速やかに中学校へも波及させることでした。生徒指導上の困難が増す「中1ギャップ」の解消や不登校児童生徒の急増に対処するため、現場からも強い要望が寄せられていたのは事実です。しかし、2026年度予算編成の過程において、中学校への35人学級導入は事実上の見送りとなりました。
導入見送りの最大の障壁となったのは、財務省との激しい折衝と財源・人員確保の限界です。小学校は「学級担任制」を基本とするため、学級増に対する教員増の計算が比較的シンプルです。これに対して中学校は「教科担任制」を採用しており、1学級あたりの生徒数を減らして学級数を増やすと、各教科の教員をバランスよく配置するために小学校以上の教員数と人件費が必要になります。
財務省の財政制度等審議会は、「小学校における少人数学級化が明確な学力向上や教育効果につながっているか客観的なエビデンスが乏しい」と指摘。さらに、後述する深刻な教員採用危機を前に「定数を増やしても教員の採用が追いつかず、質の低下を招く」と強く難色を示しました。文部科学省も人員確保の破綻を恐れ、中学校の全国一律導入に踏み込めない袋小路に陥ったのが実情です。