本堂の扉をくぐると、誰もが思わず言葉を失う。高さ約7メートル。巨大な百獣の王・獅子の背に乗り、右手に知恵を象徴する宝剣を執る文殊菩薩像。鎌倉時代の仏師・快慶の最高傑作とされる国宝「騎獅文殊菩薩及び脇侍像 5躯」だ。
単なる木像ではない。生きているかのような錯覚を覚える。ガラスでできた玉眼(ぎょくがん)が暗がりの本堂内で鈍い光を放ち、参拝者の目線をどこまでも追いかけてくるかのようだ。四方を固める脇侍(善財童子、優転王、須菩提、仏陀波利)の表情も緻密極まりない。800年以上前に作られたとは思えない保存状態の良さと、ほとばしる情熱。正面に立ち、じっと見つめ合っていると、頭の中の雑念がすっと消え去っていく感覚に囚われる。