伊藤兄妹の固い結束の背景には、昭和の無頼派を思わせる父親の存在と、映画のように過酷な幼少期の原体験があります。現在の伊藤沙莉の家族構成は、母、母の実姉(伯母)、長男(俊介)、長女(しおりさん・一般人)、次女(沙莉)の5人体制が基本単位となっていますが、かつては実父を含めた家庭でした。
二人の実父は道路舗装会社を経営していましたが、バブル崩壊や放漫経営のあおりを受けて事業が破綻。莫大な借金を抱えた末、沙莉が物心つく前のわずか2歳の頃に忽然と姿を消しました。家を追われた一家の困窮ぶりは想像を絶するものでした。俊介の手記によると、住む場所を失った直後は、母が手配した軽トラックの荷台で夜を明かしたり、兄妹が別々の知人宅や伯母の家に一時的に預けられたりする「一家離散」の生活を余儀なくされたといいます。
このどん底の家庭を救ったのが、母と伯母の存在でした。母は塗装業などの肉体労働を昼夜兼行でこなし、伯母が幼い子どもたちの面倒を一手に引き受けました。二人の強い大人の背中を見て育ったからこそ、俊介と沙莉の間には「家族は絶対に裏切らない」「どんな苦境も笑いに変えて生き延びる」という、骨太な人生哲学が叩き込まれたのです。
なお、蒸発した父親については、のちに再会を果たしたものの、俊介曰く「稀代のトラブルメーカーでありながら、どこか憎めない愛嬌のある男」だったと回顧されています。癌を患って他界する際、家族全員でその最期を看取ったエピソードは、機能不全家族が時間をかけて和解へと至るひとつの人間賛歌として、多くのファンの胸を打ちました。