不気味なイメージが先行するトリカブトですが、実は「騎士道」「栄光」「武者修行」という、勇壮で気品に満ちた花言葉も持ち合わせています。同じ植物でありながら、これほど正反対のメッセージを内包している点は植物文化論の観点からも非常に興味深いテーマです。
「騎士道」という花言葉の由来は、その独特な花のフォルムにあります。トリカブトの花びらのように見える部分は実は萼(がく)が発達したもので、頂部の萼片が前方に丸く突き出し、中世ヨーロッパの甲冑である「騎士の兜(ヘルメット)」に驚くほど似ています。戦場で名誉と主君のために命を懸けた騎士たちの高潔な精神、身を護る兜の威厳ある姿が連想されたことで、イギリスやフランスを中心に「chivalry(騎士道)」の花言葉が定着しました。
日本における名前の由来も、同様のインスピレーションに基づいています。古くから宮廷音楽を奏でる雅楽の楽人が被る冠「鳥兜(とりかぶと)」や、武士が戦場で被る兜の形に酷似していることからその名が付きました。英語圏でも修道士の頭巾を意味する「Monkshood(モンクスフッド)」や、兜を意味する「Helmet flower(ヘルメットフラワー)」と呼ばれており、洋の東西を問わず「頭部を保護する被り物」に見立てられてきた歴史的一致が見られます。